行ったことのない駅で降りて散歩してみたり、家族旅行で初めての土地で町歩きをしてみたり。
こういう場面はとてもわくわくする。
わくわくしながら、心の中でひっそりと出会いを求めている。
だいたいどこの町のお店にも生活雑貨は置いてあるもので、時に駅ビルのおしゃれな雑貨屋さんだったり、観光地の古びたお土産屋さんだったり(この場合はお饅頭などのご当地お菓子たちのだいぶ後ろ、お店の奥の方に置かれていたり)する。
最近じゃちょっと大きめな本屋さんにも文房具などと一緒に置いてあったりするものだから、全く気が抜けない。
出会ってしまったら、ひと目見てくぎづけ。
触れたい衝動を抑え、素知らぬふりでいったんその場を離れて、別の商品を見て歩く。(見ているようで、もはや何も見ていない。)
戻って来て、もう一度最初から動作をやり直す。おそるおそる手に取って、触ってみる。棚に戻す。離れる。
3回目。手に取って、今度は取っ手や底裏の印まで、よくよく見る。見る。手触りを感じてみる。
朝コーヒーを注いだところを想像する。自宅の棚に収まった姿を想像する。(ここまでで体感15分)
…「よし!」と心の中で自分会議の全員から承認を得たことを確認し、レジへ。
こうして何ともエキサイティングな(まどろっこしい?)体験を経て、我が家にやってきた各地のマグカップたち。それぞれに味があり、かわいい。何も言わないけれど、ただそこにあるだけで癒し。
全国には伝統的な焼き物の産地がいろいろあって(有名なのは有田焼、美濃焼、信楽焼など)、それぞれに窯元がある。
この「窯元を直接訪ねる」というのがエキサイティングな体験の最たるものだ。
窯元にはたくさんの器があることはもちろんだが、町の雑貨屋さんとは決定的に空間の質が違う。
ほどよい緊張感で空気が澄んでいて、静かで、あたたかく、丁寧に形作られたものたちからじんわりと幸福感がにじみ出ている。愛情こめて大切に作られたという自信に満ちた器たちの、誇らしげなこと。
自然とこちらも姿勢を正して向き合わなければ、という気持ちにさせられる。
そうしてやって来たマグカップのうちのひとつ。

会津本郷焼(福島県)樹ノ音工房のマグ。
手に収まった時の安心感のある絶妙な厚み、ぽってりとした形、あたたかみのあるシンプルなデザイン。とどめのバイカラー!!!(なぜか私は2色使いのものに異様に惹かれてしまう。)
か、かわいい…。やさしい。あたたかい…。
じんわりと、しっくりと、しみじみと。にじみ出る幸福感。
朝に、午後に、この愛しいマグでコーヒーをいただく時間。癒される…。
(ちなみに、あまりに気に入りすぎているので、うちの食器棚には別デザインのコーヒーカップやスープマグなど、こちらの工房の器がいくつもある。)
■樹ノ音工房(福島県 会津本郷焼)
この夏もちょっとした旅行を予定しているのだけれど、さて今回はどんな出会いがあるかしら。
2025年8月1日